「学生の頃は前屈で手のひらが床についていたのに、今では全然届かない…」
そんな話を聞くことは珍しくありません。年齢を重ねるにつれて、少しずつ身体が硬くなっていく。
これは多くの方が実感していることではないでしょうか?
身体が硬くなる原因には、筋肉の柔軟性の低下や関節周囲の組織の変化など、さまざまなものがあります。そして、これは股関節だけに起こることではありません。
ぶっちゃけて言えば、年齢とともに身体のさまざまな関節で動かせる範囲が少しずつ狭くなっていくと考えたほうが分かりやすいでしょう。
股関節の硬さはとても重要
その中でも、私が特に重要視しているのが股関節です。股関節が硬くなると、腰や膝など他の部分への負担にも関係してくるからです。
そのため、腰が痛いからといって、腰だけを見るのではなく、
「股関節はしっかり動いているかな?」
というところも確認します。
実際、痛みを感じている場所と、本当に動きに問題がある場所が同じとは限りません。そして、股関節と同じくらい見逃したくない場所があります。
それが**「胸郭」**です。
実は「肋骨」も硬くなる
胸郭というのは、簡単に言えば胸の周りにある肋骨や胸椎などで構成されている部分です。
ここで大切なのが、肋骨の弾力性です。
肋骨は「骨だから硬くて当然」と思われるかもしれませんが、呼吸をすると肋骨は動いています。
息を吸えば胸郭が広がり、吐けば戻っていく。
つまり、肋骨周りにはある程度の動きと弾力性が必要なんですね。
ところが年齢を重ねると、肋骨周りの筋肉や関節などにも変化が起こり、胸郭の動きが少しずつ小さくなっていくことがあります。
さらに、肋骨と胸骨をつなぐ肋軟骨なども、加齢によって柔軟性が低下していくことが知られています。
胸郭の硬さは肩や腰にも関係する
では、胸郭が硬くなると何が起こるのでしょうか?
例えば、
- 肩こり
- 首の動かしにくさ
- 肩の痛み
- 腰の痛み
など、身体のさまざまな部分との関連が考えられます。もちろん、胸郭が硬いから必ずこれらの症状が出るという単純な話ではありません。
ただ、身体はそれぞれが独立して動いているわけではありません。
胸郭の動きが少なくなれば、その分を肩や腰など別の場所が補わなければならないことがあります。だから私は、肩や腰に痛みがある方でも、肋骨周りの動きを確認することが大切だと考えています。
痛いところだけを施術すればいいのか?
整体に来られる方の多くは、
「腰が痛いから腰を何とかしてほしい」
「肩がこっているから肩をほぐしてほしい」
と思われると思います。もちろん、痛みのある場所を確認することは大切です。
でも、そこだけを見ていては分からないこともあります。
私の場合、腰痛の方でも肩こりの方でも、まず身体全体の動きを確認します。
その中で胸郭の動きが悪ければ、肋骨周りの状態もチェックします。そして必要であれば、胸郭の動きや弾力性を取り戻すためのアプローチを行います。
年齢を重ねるほど「戻す」のは簡単ではない
ここは施術をしていて、私自身が強く感じるところです。
若い方であれば、胸郭を動かすことで比較的変化を感じやすいことがあります。
一方で、長い年月をかけて身体の動きが少なくなっている場合、すぐに元の状態へ戻るとは限りません。
中には、長く身体のケアを続けることで、少しずつ柔軟性が戻ってくる方もいます。身体の変化というのは、今日硬くなったから今日柔らかくできる、というものではありません。
長い時間をかけて変化してきたものだからこそ、戻していくのにも時間が必要になることがあります。ただ、戻らないことはないとも思っています。
施術をしている側からすると、こういうところに**「年齢を重ねる」ということの大きさを感じることがあります。
「身体が硬くなった」と感じたら
「昔はもっと身体が柔らかかったのに…」
そう感じる方は多いと思います。そのとき、股関節や太ももの裏だけを気にするのではなく、胸郭、つまり肋骨周りもしっかり動いているかを一度確認してみてください。
肋骨の弾力性は、普段の生活ではなかなか意識することがありません。
だからこそ、身体の動きが悪くなっている方にとっては、意外なところに改善のヒントが隠れていることがあります。
「腰が痛いから腰」
「肩がこるから肩」
と考えるだけではなく、身体全体がどう動いているのかを見ること。これが、身体を整えていくうえで大切なことだと私は考えています。